子育て中の働く親は「withコロナ」をどう生きる?
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、私たちの暮らしや働き方は大きく変化した。とりわけ負担を強いられたのが、子どもを持つ親たちだ。学校や保育園が休校・休園となり、「在宅育児」と「在宅勤務」を同時並行で行わなければならない大変さを味わった方も多いだろう。新型コロナウイルスの第二波への警戒が求められるなか、子育て中の働く親は、どのように「withコロナ」「afterコロナ」に対応していけばいいのか。また企業側が留意すべきこととは――。子育ての質向上・母親の社会進出支援を目的とした学びの場「マザーカレッジ」の主宰者であり、2019年には文部科学省「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」の有識者会議の委員を務めた、東京大学大学院教育学博士の江藤真規さんに話を聞いた。
母親たちから届いた、不安の声



前者は、子どもの命をどう守っていけばいいのかという危機感。後者は、「在宅勤務と在宅育児をどう両立すればいいのか」「オンライン教育で本当に大丈夫なのか」という不安や懸念です。


遊ぶにしても、勉強をするにしても、親のかかわりが必要です。たとえ、学校や学習塾がオンラインで授業を配信してくれたとしても、結局、親が付き添わなくてはならない。デジタル機器も親が設定しなければいけませんしね。ここに親の苦労がありました。


「この授業で大丈夫なの?」「わが家には合っていないのでは?」と不安になってしまった親御さんもいたようです。加えて、親自身も生徒としてオンライン授業を受けた経験がほぼなく、その価値が見えにくい側面もあったかと思います。お互いに慣れるまで、ある程度、時間が必要ともいえます。

暮らしと仕事と学びが家庭に集中したステイホーム

しかし、このコロナで、あらゆることが家庭に持ちこまれた。家庭で仕事をし、勉強をし、生活もする。外の世界との境界があいまいになった今、あらためて「家庭の哲学」や「ルール」を再構築する必要があります。
これまで、なんとなくお母さんが料理をして、お父さんがゴミだしをして…と繰り返してきた日常のあたりまえを見直さなければなりません。そのためには、「私たちはどんな家庭を築きたいのだろう?」「子育てで大切にしたいことは何だろう?」といった、家庭内の哲学のようなものを考えることが大切だと思うのです。


「仕事と暮らし」をわけて考えるのではなく、「暮らしの一部としての仕事」、「暮らしを起点にした仕事や学び」を考えることが大切です。もしかしたら、仕事と生活が分断されていた、従来の日常のほうが異常だったのかもしれません。異常性のある枠組みのなかで、女性は「社会で働こう」「子どもを産み育てよう」と言われてきたわけですから、やはりみなさん無理をしていましたよね。


マインドアップに有効なのは、誰かと繋がる、ということです。家族ととにかく話す。「私はこう思う」「あなたはどう思う?」と対話を重ねる。そうやって連帯感を醸成しながら、相互理解に基づいた役割分担や家族のルールをつくっていってほしいと思います。
そしてもう一つ、大切なのは、「家庭の‟外”」と繋がること。コロナの感染が拡大していた時期に、アンケート調査で「子育ての困りごとを誰に相談していますか?」とお母さん方に聞いたところ「学校や学習塾の先生」と回答したのはたったの10%でした。これは従来どおりの傾向ではありますが、「家庭のなかにある問題を家庭のなかだけで解決しよう」という風潮は強いです。
ただ、職場や学校をはじめ、あらゆる物事が家庭に集中している今、家庭のなかだけでは問題を解決するのは困難。家庭が、職場や学校、地域社会ともっと積極的に繋がることが問題や不安を解消するきっかけになるのではないでしょうか。
